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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第1章 王弟が散った日
あの日
僕は父さまから頂いた絵本を持って、広い廻廊を走り抜けた。
『 兄さまー!兄さまー! 』
『 騒がしいなぁ。俺はここだよ 』
きっとあそこにいる。何故だがそれがわかって無我夢中で走りきった場所には、やはり兄さまがいた。
『 父さまが素敵な本をくださいました!
お国にはふたりの神さまがいらっしゃると、兄さまはごぞんじでしたか?火の神さまと水の神さま……』
『 …?そうだな? 』
『 僕はすぐにわかりました!この絵本にいるふたりの神さまみたいに、僕と兄さまもふたりでこの国をまもっていくのだと! 』
『 え?俺と……お前が? 』
『 兄さまが火で、僕が水です 』
この時の僕は何も知らず、何も知らされず、無知で無邪気なままこの喜びを兄さまに伝えた。
強く誇り高く厳格な太陽神
淀みなく穏やかで慈悲深い水神
陽の日のように人々の上に君臨される兄さまを、影で支えていける者は他でもない自分であると。
『 ハハッ……だったら約束してくれよ? 』
王宮の中心にある、水の社(やしろ)が建つ庭のほとり。
兄さまは樹の上にいた。
僕は兄さまの後に続こうとして……でも登ることができなかったから結局は、樹の下から兄さまを見上げていた。
『 何が起ころうとこの国を守ると。
俺をひとりで…戦わせるなよ 』
『 わかりました、兄さま 』
約束です
この先何が起ころうと──僕は兄さまの側を離れません
兄さまにお仕えし
この国の君主となられる貴方をいつまでも……いつまでも支え続けると約束します