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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第25章 甘い毒
──…
「では審議に移る」
王宮の北に構える大神殿。半円状に並んだ椅子に侍従達が座り、中心に立つ青年を注視していた。
そのうちのひとり──ラティーク・タラン・ウル ヴェジール(侍従長)が前に出て、皆に告げる。
「私はこの者、ハムクール・シアンを王宮警備兵に推薦する。異議のある者は挙手を願います」
「侍従長様は本気なのか……!?」
ザワつく神殿。
不満と動揺を隠しきれない他の貴族達。
そうなるのも当たり前で、タラン侍従長が王宮警備兵にと推薦するこのシアンは、《 クルバン 》としてクオーレ地区に連れてこられた賤人 だった 男である。
そんな生まれも卑しい者が、王の身辺を守る王宮警備兵の職を与えられるなど認められるわけがない。
だが──いや、さらに、と言うべきか
こいつは近衛隊将官ハムクール・スレマン・バシュに気に入られ、伯爵家に養子として迎えられたばかりであった。
異例どころの騒ぎではない。
「異議のある者は無し……ということで宜しいか?」
「お、お待ちください侍従長様。その者はっ……ほんの数月前に隊にはいったばかりと聞くではありませんか」
強引に審議を進めるタランへ、言いにくそうにしつつも声を上げる者がちらほらと現れた。
彼等はみな、シアンを蔑み、恐れている。
大神殿の中心で静かに顔を俯かせていたシアンは、徐々に大きくなる貴族たちの不満の中で、悠然と面(おもて)をあげて声を発した。