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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第25章 甘い毒
「今は審議の刻です」
「なに…っ」
「静粛になさるべきかと。ただ侍従長様の決定に逆らいたいという御方だけ、どうぞ挙手をお願いします」
「──…っ」
シアンの言葉で、神殿は再び静かになった。
この状況に不満こそあれど、面と向かってタラン侍従長に反対する危険を犯すような貴族はいない。
彼等は悔しげに口をつむぎ、そして最後ののぞみと言いたげにサルジェ公爵に目を向けた。
タランと並ぶ唯一の公爵家──サルジェ家当主であるその侍従は、いつもはタランの意見に反発ばかりしているのに、何故か今日だけは逆らわずに黙っている。
それで結局、挙手をする者は現れなかった。
「全会一致、で間違いありませんかな?」
否応なしにタランが問いかけると、皆は渋々と頷くだけ。
「では──…このまま任命の儀を」
タランが右手をあげ、奥から現れた侍従がシアンの元に歩み寄った。
その場に膝をついた青年の頭に、新しい帽子と、頭巾飾りが付けられる。
「ハムクール・シアンをベイオルク(王宮警備兵)に任ずる!」
侍従へ向けて頭を垂れたまま、シアンは口角を上げふくみ笑った。
──