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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第26章 密書の送り主

 警備の時間を終え、次の者と交代したシアンはその日暮れ、王宮の庭園を歩いていた。

 花も草も無いが、枝を尖らせた葉のない樹が道をかたどり並んでいる。


『 兄さま!ぼくも兄さまの隣りに座らせてください! 』

『 お前は無理だよまだ小さいから 』

『 このくらいの木ならぼくにだってのぼれます 』

『 なら手を引いてやるからこっちに掴まれ 』


 かつてそこにいた高貴な兄弟の話し声が、歩くシアンの耳に聞こえたような気がした。

 幻想だとわかってはいても、シアンの口は切なく微笑む。

 それは遠く昔の……いつかも思い出せぬほど霞んだ記憶に生き続ける声だった。

「やっと……戻りました」

 二股にわかれた幹が特徴的な一本の前で、シアンは立ち止まる。

 彼はその樹を見上げた。

「ここまでの道は長かった。けれどじきに、僕の目的は果たせます」

 シアンが懐かしみをこめて幹に手を触れると、乾いた樹皮がペラリと剥がれる。


──コツン


 その樹皮が地面に落ちると同時に

 ある人影が、シアンのいる庭園の中へはいってきた。


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