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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第26章 密書の送り主

 シアンが去り、残ったタラン侍従長のもとへ、別の王宮警備兵の男が近付いた。

「…何か動きはあったか?」

 視線はシアンの去った方向へ向けたまま、タランはその男に問う。

「いいえ、この数日はとくに何も無く……。バヤジット・バシュの邸宅から出た後は、新しく用意された宿舎の部屋で寝泊まりしているようです」

「スレマン伯爵のもとへは?」

「六日前と昨日の二度、スレマン伯爵を訪ねていますね。容態を確認しているのでしょう」

 タランの指示でシアンを見張っているその王宮警備兵が、小さな声で耳打つ。

「何故あのような怪しい者を王宮警備兵に命じたのですか?わざわざ見張るくらいならいっそ遠ざけてしまえばよいでしょうに」

「手を貸す約束をしたのでな」

 ごくごく当然の疑問を持った男の問いかけに、タラン侍従長は不吉な笑みを浮かべて返した。

「アレの目的を見極めるには、早く次の行動を起こさせるべきなのだ。…私の敵であるなら尚更、ということになる」

「侍従長様の敵……?と言うとあの、バヤジット将官の手先ということでしょうか?」

「さてな、知らん。だが背後にいる何者かについてもじきにわかるだろうよ」

 くれぐれも目を離すな。

 タランは男に念押しした後、いつものように王がいる寝所に向かったのだった。






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