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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第26章 密書の送り主
当時の王宮には、先王の崩御により若くして即位した現国王と、七つ歳の離れた幼い王弟がいた。
王弟はとっくに王位継承権を放棄していたが、それでも国王の側近達は、反乱分子が彼をかつぎ上げる事を危惧し、警戒していた。
とくに、当時すでに議会の実権を握っていたラティーク・タラン・ウル ヴェジールは、あらゆる手で王弟を国王から遠ざけ、二人の兄弟が仲違いするよう仕向けたのだ。
明るく活発だった王弟も……いつしか笑顔を忘れ
砂漠にひとり咲く孤独なアデニウムのように、じっと何かに焦がれながら、目立たぬよう静かに暮らしていた。
けれど、十二の生誕日を控えたある日──
王弟の部屋にある書状が置かれていた。
王弟は書状を読んだ。
そこには兄である王の名前と、これまでの冷たい態度の謝罪、そして彼の生誕日を祝福させてほしいという内容が綴られていた。
だから……王弟はその夜、書かれた指示に従い、兄の寝所を訪ねたのだった。
書状には『 地下の隠し通路を使い、外の警備兵に見られないよう来て欲しい 』と記されていたから、王弟はそのようにした。
『 兄上……? 』
王弟が忍び込んだ時
寝所は明かりがなく真っ暗で
『 兄上?僕です 』
『 ………… 』
『 どうして明かりが消えて── 』
『 ─…ッ、なんだ!? 何故お前がここにっ…!! 』
『 ───…え 』
……
仕組まれた罠だったのだ。
弟の姿を見た王は声をあげ、待ち構えていたように外から警備兵が集まってきた。
『 寝所の入口で兵が倒れているぞ! 』
『 駄目だっ…死んでいる!誰の仕業だ!? 陛下の安全を確認しろ!』
違う
『 陛下!ご無事ですか!? 』
僕じゃない
『 お前っ…──俺を殺しにきたのか 』
『 ………ッ 』
僕は何も、していない
『 それほど俺が憎いか!! 』
『 …ッッ 』
疑われた王弟は隠し通路へ逃げ込んだ。
彼は自室には戻らず、迷路のような通路をたどり王宮を離れた。
そして都外へ逃亡した王弟は
砂漠オオカミに襲われて死亡。亡骸を見付けた近衛兵が、王族の印が刻まれた指だけを王都へ持ち帰ったのである──。