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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第26章 密書の送り主
「どなたですか?」
シアンは慎重に問いかけた。
「弓兵師団将官、カナーヤだ」
「カナーヤ・バシュ…?それで、僕に用とはどのような?」
「クオーレ地区内で怪しい者を捕らえたのだが、シアン殿を訪ねて来たの一点張りなのだ。一度その者の顔を見てもらえまいか」
「……とくに心当たりは無いのですが」
「そうか。ではこのまま処分することになるのだが」
「……ハァ。いや確認しましょう」
外の男は、弓兵師団の将官を名乗った。
彼とシアンは、これまできちんと顔を合わせたことがない。徴税の管轄を任されているカナーヤ・バシュは、もともと都外に出るのが常だった。
砂嵐の時期に戻っていたのだろう。
断れる相手ではないので仕方なく帽子をかぶり直し、ゆるめていた隊服を適当に整えながら、シアンは鍵を上げ、自室の扉を開けたのだった。
普通に考えてみれば、賤人であるシアンへ尋ね人が現れるのは可笑しな話だ。王宮警備兵になったとはいえ彼の人脈がいきなり広がるわけじゃない。
ハナム王妃がさっそく手を打ってきたのだろうか。
気が進まないままシアンは宿舎の廊下に出る。
「おはつにお目にかかります、カナーヤ・バシュ。捕らえた不審者というのはどのような者でしょうか?」
「会って見ればわかる故、説明は不要かと」
「そうですか」
将官ひとりがいるのかと思えば
シアンの前には、彼の他に二人の男が立っていた。
「……。現在このような格好ですので、衣服を整えるため少し時間を頂きますね」
「──その必要も無い」
「…ッッ」
失敗した
男たちの装束を見たシアンは、瞬時に危険を感じとった。
将官を名乗る男も、左右の二人も、身に付けているのが隊服ではなかったのだ。
シアンはすぐ部屋に戻ろうとしたが相手のほうが速かった。
「…ッ──ん゛‥…!!」
「大人しくしてもらうぞ」
「く……!?」
左右の男二人がかりで引き戻され、口を布で塞がれる。
彼等はシアンの頭に布袋を被せて視界を奪い、抵抗する手足を縛りあげた。
そしてシアンの身体をかつぎ上げると、誰にも見られないよう急いで宿舎から立ち去ったのだった──。