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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)
その後男達は、シアンをある場所へ拐っていった。
「到着だ」
床に転がされたシアンが不自由な手足でもがくと、問答無用で足蹴(あしげ)にされた。
「‥‥ッ…‥‥…!!」
「抵抗するならまだ続けるぞ?わかったか?」
男のひとりがシアンの頭に手を伸ばし、被せていた布袋を乱暴に取った。
「騒ぐなよ?」
「フゥ‥フゥ…‥ッッ」
「よし」
口を塞がれたシアンが、鼻で息をしながら従順にうなづく。
男はそれを確認し、彼の口元の布をほどいた。
「…ハァハァッ‥…カ゛──ハッ…!!」
口を解放され大きく咳き込むと、血の塊が吐き出される。
痛みにたえて周囲を見ると、そこは牢屋でもなく、どこかの屋敷でもない。見知らぬ場所だった。
「ここはハムクール伯爵家の敷地内だ」
「…ハァッ‥‥ハァ、伯 爵…‥の‥‥!?」
土壁の空間。外へと繋がる登り階段。なるほどここは、伯爵家の屋敷のそばに造られた、半地下の貯蔵庫といったところだろう。
「なら‥…ッ‥…僕を捕らえる よう命じたのは、伯爵家ですか……」
「その通りだ。奥方様の意向により、貴様を処分する」
「‥‥!?‥理由は?」
「もちろん貴様が、スレマン伯爵を錯乱いたらしめた故だ」
「…っ」
ハムクール・スレマンの乱心によりシアンが伯爵家の養子となり、もっとも良く思わないのは伯爵家の人間だ。
だが今のシアンは王宮警備兵という立場な上に、タラン侍従長との繋がりがある。シアンを疎ましく思う伯爵家も、表立って彼を糾弾できない。
しかし……シアンの嫌な予感は的中した。
彼を捕らえにきたこの男達が、正式な近衛隊の隊服を着ていないという事は──
「ここで無実の僕を処分するは明らかな " 私刑 " ‥っ。法に背きっ…陛下を欺くコトになりますよ…‥!?」
「黙れ悪党が!」
「ガハッ─‥!」
「何が無実だ、馬鹿馬鹿しい。貴様の手口はすでにわかっている」
「ハァ!!…ハァ!!‥‥‥なにを、言って……」
胸を蹴り飛ばされ仰向けに転がる。
こちらを嘲罵(ちょうば)する相手を睨み付けたが、声はすでに絶え絶えだった。