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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第3章 入隊の遊戯




「………………!!」

 一連の場面を指を加えて見ているだけの衛兵は、将官の醜態(しゅうたい)を前に気不味そうにしながら、思いきり興奮している自らの下半身を手で抑えていた。

 衛兵が立つ場所からは、何が起きているのか全ては把握できず、ただ、将官の股の間に跪き(ひざまずき)、頭を振るシアンの後ろ姿が見えるのみ。

 しかし、見えないところで繰り広げられている彼のワザがどれほど激しく厭らしく、至極であるか

 ……それが伝わってくるには十分な光景。



 だが……



 だがやはり疑問をいだかざるを得ない。

 何故この賤人は片手しか使わないのだろう。彼の左腕は依然として、ほとんど動いていないのは何故なのか。

「…ッ…ン」

 そしてついにシアンの頭が動きを止めた。

 男を射精まで昇らせた彼は卑猥な音を出して液体を吸い上げ、喉奥に流し込む。

 喉の音が聞こえてきそうな沈黙は一瞬のうちに終わり、男の絶え絶えな呼吸がすぐ後に続いた。

 精を吸い取られ脱力した肉塊の前で

 唾液か精液かわからないモノを口の端に垂らしたシアンが、重だるそうに立ち上がる。


パサッ


 その時、左半身に巻き付いていた布がずり落ち、彼は腰の下着を除く全ての衣服を床に落とした。



「お…前……」

「──…」

「その腕……!?」



 肉が薄くスラリと痩せた体躯。

 長い足を肩幅に開いて立ち尽くす青年の後ろ姿を、衛兵は丸い目で凝視した。



 シアンの左腕には稀有な器具が取り付いていた。

 黒茶の革ベルトが二の腕に固定され、丸い肘当てがそれに繋がり、さらにそこから伸びる紐状の黒い布が肘から下に巻き付いている。

「お前、それ………………義手か」

「……」

 衛兵の問いに無言のシアンは、ちらりと背後を流し見た。

 先程の婉美な笑みはすでに消えており、温度の乏しい視線が衛兵に向けられる。

 乱れた前髪の隙間から男を見据えたソレは

 暗がりにこそ強く色付く……深い翡翠(ひすい)色の瞳だった。



 それから、言葉の続かない男からふいと顔をそらしたシアンは将官に向き直った。

 彼は将官の足元にうやうやしく跪く。

 そして頭を低くさげ、投げ出された足の甲に口付けを落とした。──服従の証として。








──…






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