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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)
「はなすんじゃなく て……──あげるンだ」
「……!?」
「シアンにあげる。……オレの、夢」
だからさ──
「──…生きてね、シアン」
ふいにオメルが瞼を上げた
霞む視界でオメルが見たのは
刀を手にして震えるシアン
そして彼と目を合わせたオメルは、穏やかに
…でもやっぱり悲しそうな瞳で見つめた
笑おうとして
上手く力が入らない頬っぺたを、ひくりと動かした
「‥‥‥‥生きて ね」
「───ッッ」
オメルに見つめられたシアンはその目を大きく見開いた
全身の肌から一気に体温が失われる
シアンは言葉を発する間もなくその手を大きく振りかぶった
──‥ッ
長い湾曲刀を、真一文字に横に振る
──そしてその直後、鮮やかな血飛沫を身体に浴びた。
....
オメルは声をあげなかった。
斬られた喉からゴフッと小さく血を吐いて……頭を垂れて、静かに、逝った。
「……ハァ………ハァ………ハァ」
「───」
「ガハッ!はぁっ……ハァ……!!……ハァ……!!」
冷たい室内に散った血は
シアンの頬まで散った血は
とても、とても温かく……シアンを追い詰めた。
その場に倒れそうになったシアンは刀を捨てて踏みとどまる。
苦しそうに無理やり呼吸を繰り返し
動かないオメルを真っ直ぐ見下ろした彼は、視線をそらさず呟いた。
「君は 必ず、陽の国へ…いけ……!」
「──」
「僕はこの まま‥‥──地獄に残るから」
自らの手で無惨に散らした愛しい命に、シアンは永遠の別れを告げた。
───…