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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第28章 引き返せぬ運命
──…
“ 遠方の村があのような状態になっていようとは…っ ”
夜もふけた頃
自邸の寝室で、帰宅したばかりのバヤジットは疲れて椅子に腰をおろした。
ここ数日の彼は、対帝国の前線まで部下とともに馬を走らせていた。
砂嵐の襲来により兵を引いた帝国だが、嵐がやんだ今ふたたび警戒が必要だからだ。
そして偵察の結果、今のところは帝国に目立った動きはなかった。よって部下だけを残してバヤジットは王都に戻ったところだ。
ただ、今回の偵察でバヤジットを困惑させたのは、遠方の街や村の窮迫ぐあいである。
お互い兵を引いたとは言え、カナート(地下用水路)の破壊をめぐる帝国との敵対は続いている。宿屋は仕事が半減したうえに、国からの支給も途絶えた為、多くの者が生活に苦しんでいた。
“ 帝国との国交が途絶えただけでっ…我らの国はここまで窮地に立たされるというのか ”
貧しい民の暮らしは、バヤジットの疲弊を強める。
さっさと着替えて眠りにつこうとした時
コン、コン
玄関の外で、来訪を知らせる銅製のリングがドアに数回打ち付けられた。
「ん…?」
バヤジットは脱ぎかけていた手を止めて階段を降りた。
ドアを開けたその先に
まさか、彼が立ち尽くしているとも思わず──
ギィー...
「……!! ……シアン、なのか…!?」
「──…」
バヤジットがドアを開けると、すぐ目の前に顔を俯かせたシアンが立っていた。