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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第4章 掌握する者
──…
その頃、王宮の北に構える神殿で議会が開かれていた。
本来ここは太陽神を祭る場所であり、水の社(やしろ)と並ぶ聖域である。
しかし侍従長の権限で、六年前に王宮からここへ議会の場所は移された。
コリント式の二重列柱廊(にじゅうれっちゅうろう)が側廊と交差する場所で、半円状に並べられた椅子に王はおらず、侍従たちだけが座っていた。
彼等は何度めかわからない問答を今という今も繰り返している。先日の議会でも、またその前も、議題は変わらない。
「何故帝国の要求を退ける?今すぐ国境の兵を引き上げ、壊れたカナートの修復を許可すればよかろう!」
左に座る初老の男が唱える。
すると、ちょうど彼と対角線上に座る男が嘲笑とともに首をふった。
「まだそんな事を仰っているのですか?何度もお伝えしたとおり、これは帝国の策略です。もし我が国に奴らの侵入を許そうものなら、一気に攻め込まれ、カナートを横どられてしまいます」
それはふた月ほど前にさかのぼる。
キサラジャから東の帝国へ水を運ぶカナート(地下用水路)が何者かの手で破壊されたのだ。
頑丈な用水路をどのように破壊したのか、その方法はわかっていない。ただ瓦礫が積み上がった現場には、何か嗅いだことのない異様な臭いが立ち籠めていたらしい。
当然、帝国は修復を求めた。
だがそれを拒み、国境に兵を置いて帝国の視察を妨害するよう指示したのが、キサラジャの為政者であるラティーク・タラン・ウル ヴェジール(侍従長)だった。