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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第32章 焦がれる身体

「はぁっ…はぁっ、く……!煙が……!」

 しだいに辺りの温度が上がり…煙も臭ってくる。

 バヤジットは頭のターバンを緩め、口と鼻を覆った。

 まだシアンを見付けていない。床に残った平民たちの足跡をたよりに、バヤジットは奥へと進み続ける。

 すると、長い長い暗闇の道──その先に、ついにひとつの灯りが見えた。

“ あれは?壁に燭台がかかっている? ”

 壁にそって燭台がいくつもかけられ、通路を薄く照らしている。

 そこから先には、食料の貯蔵庫らしき場所や、人の寝床と思われる場所があった。

“ シアンもここに…!? ”

「いるのか!?」

 バヤジットは灯りを捨てた。地下道の部屋を片っ端からのぞいていく。

 違う

 ここも違う

 ここもだ、ここも、ものけの空(から)…

「くっ…そ、どこにいる…!! 」

 やみくもに探しても見つからない。苛立つバヤジットだったが


───?


「──ッ…!? なんだ……何の声だ?」


 そこで新たな異変が襲った。

 動物の鳴き声が、突如として響いたのだ。

 コレはおそらく…犬の鳴き声。



『 白い肌と髪?──ってあの犬とヤッてるっていうキチガイか?俺はナンも知らねえですよ!』



 そうだ、あの男は " 犬 " と言ったじゃないか。

 バヤジットは、鳴き声の出処を探して走った。





──


 彼はすぐに見つけ出した。


「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」


ギャン!ギャン!ギャン!ギャン!

ギャン!ギャン!


 狂ったように犬が鳴いている。

 その後ろで大きな炎があがっている。


「シ…ッ───シアン!!」


 すぐ隣に……ぐったりと動かないシアンがいた。


 
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