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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第32章 焦がれる身体
「お前の熱を…‥っ‥…僕に‥…わた せ」
「‥…ッ」
「僕 を‥手酷く‥抱いて、くれ…!!」
片腕をバヤジットのうなじに巻き付かせたシアンは、左手が使えないのをもどかしそうに、代わりに強く唇を押し付けた。
それから大きく口を開けて舌を突き出す。
抵抗のしかたを忘れたバヤジットの口内をなぞり…舌を捕まえ、絡めた。
「…!?」
「ん…‥バヤジ…ッ‥‥ト‥…!!」
一度絡んで、引っ込み、切なく苦しげな声で呟いて、下唇の膨らみを食(は)む。
引き締まったバヤジットの薄い唇に、何度も自分の唇を擦り付けるしぐさは、主を前に必死に甘える飼い犬のようで、とにかく性急であった。
「…は、っ‥…シ、…アン……!?」
バヤジットの驚きは少し遅れてやってきた。つまり、思考というものが一時的に殴り飛ばされた状態にあった。
口の中の柔らかな感触も、脳に響いてきた口付け音も、他人事のように理性の外枠を滑り落ちる。
だから、シアンの舌が歯列の隙間をなぞってくると、大人しく口腔への侵入を許していた。
《 バヤジット…… 》
‥‥‥‥ッ
「‥シ、ア……ンっ‥…」
ようやく…シアンの肩を掴む手に力が戻る。
カラクリ人形で例えるなら、やっとゼンマイが巻かれ始めたといったところか。
だが不味いことに、今すぐシアンを引き剥がすべき両手なのに、むしろ背中にまわして力いっぱい抱き締められないもどかしさを感じてしまっていた。
どういうわけだ
シアンの身体が傷だらけでなかったなら、無我夢中でかき抱き、本能にまかせて押し倒していた予感がする。
” くそ……何故だ……!! “
そんなバヤジットの舌はシアンを迎え入れ、受け入れて絡まってしまった。