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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆

『 さっきの寵妃だなんだは嘘だからな。焦らなくとも故郷へは近いうちに戻してやるから、それまでは俺の手足となって死ぬ気で働け 』

『あ、貴方はどこまで知って──…いや、いつから……気付いていたのですか……!? 』

『 ……さぁなあ 』

 ヤンは片膝を立てて寝そべり、気怠げに息を吐いた。

 いつも手にある煙管(きせる)は今は無く、代わりに青年から奪った小刀を暇つぶしに回している。



 ヤンがいつから青年の正体を知っていたのか──

 送られてきた招待状の、炙り出しの密書を読む前からすでに気付いていた。

 明確な境目はない。それはヤンが彼の傍で過ごすうちに、早い段階で自ずと打ち立てられた仮説だ。

 だがきっとその仮説が確信へと近付いたのは

 ギョルグとなった彼が暗闇の檻から出てきた日、髪も肌も白く染まったその面(おもて)に、依然として変わらぬ澄んだ翡翠(ひすい)の瞳を見た時か──。

 その瞳は、この国では希少な色だ。

 幼き日に、帝国皇帝であった父と訪ねた砂漠の国で " とある王族の兄弟 " に会わされた。そこで見たかつての兄弟が、同じ色の瞳を輝かせ、互いを愛おしそうに見つめていた光景を

 …ヤンが偶然、記憶に留めていただけだ。















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