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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第34章 崩壊
──…
午前の執務を終えたタラン侍従長が、王宮からラティーク公爵邸に戻っていた。
彼はいたって平然と振る舞っていた。細かな刺繍がほどこされた長丈衣(エンターリ)の裾をさばき、冬の庭園をゆったりとした足取りで渡る。
途中、大神殿へ向かう裁判官達と出会ったタランは、西の国から仕入れた珍しい色の染物(キリト)についてなど、実にどうでもよい会話を聞かされたうえで、話は昨夜の騒ぎについてになった。
「そうそう、侍従長様は昨夜の地鳴りを聞きましたかな?ここら一帯に響いたとか」
「そうですね…いくつか振動がありました。キサラジャでは珍しい現象でしたね」
「念のため調査をおこなうそうですな」
「ええ、今朝の議でサルジェ公爵がそのように申されましたよ」
事を深刻と思わない連中に対し、丁寧に礼をして別れる。
…しかしそんなタランは今朝の食卓にもつけぬほど、切迫した事態に直面していたのだ。
「侍従長様」
「……報告しろ」
公爵邸の門をくぐろうとしたタランは、見張りの王宮警備兵に呼び止められる。
門を前にして横に並ぶ二人は互いの顔を見ることなく話し始めた。