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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議
「これはいったい何の真似でしょうかっ……使者殿」
王宮の北に構える大神殿。
二重列柱廊に立つ帝国使者は、その数八名。ひとりを除きあとは護衛の武官のようだ。
聖域である大神殿に武器を持ち込むだけでも許されない。ましてや事前に連絡のない突然の来訪…。
神殿の中央で使者と相対するタラン侍従長は、焦りを悟られないよう相手を咎めた。
「カナート(地下用水路)の崩壊にキサラジャは関与しておりません…これは何度もお伝えしたが?首謀者を引き渡せ、とは横暴な態度と思いませぬか?」
「貴国の言い分に耳を貸していては埒があかぬ。それに首謀者についてもわかっているぞ──…貴公であろう、ラティーク・タラン侍従長」
「何を世迷い言を」
いきなり名指されたタランは鋭く使者を睨み付けた。
半円状に並んだ椅子に座る他の侍従は、落ち着きなくやり取りを見守っている。
「私が首謀者?いい加減にしたまえ。カナート破壊はどうせそちらの仕業でしょう……幼稚な挑発には乗りませんよ」
「帝国の水源であるカナートを破壊して我らに何の利がある?そもそも修復を妨害しているのはタラン殿だと聞いているが?」
「当然、貴国が関与した証拠を掴むため今もカナートは調査中です。貴方がたを近づければ原因をうやむやにされるばかりか…侵略の糸口を与えかねない」
「違うな…。タラン殿は、破壊の痕跡を見られる事で、ある兵器の情報が露呈するのを恐れたのだろう?…火槍(シャルク・パト)の」
「──…」
「貴公が秘密裏に造っている筈だ」
帝国使者はそう言って、タランの反応を伺った。
火槍の名前すら聞き及ばない侍従達は、いったい何の話をしているのかと困惑している。
タランは冷静に相手の挑発を受け流した。
「……何のことやらさっぱりですな」
確信をついた発言だろうが…焦る必要は無い。証拠は水の底に沈めてしまったのだから。