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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議

「私が兵器を隠していると?それこそ根拠の無い話です」

「一年前、我が国の機密──火槍の設計図がキサラジャに持ち出された。侍従長、貴公が我が国によこした密偵(スパイ)の仕業だ」

「身に覚えの無いコトよ」

「シラを切るか……おい、奴を此処へ運べ」

「?」

 密偵の話を出されようと澄ましたままのタランは、かねてから慎重な男である。

 各国に潜ませた密偵との会合場所は必ず王都の外だ。もちろん彼が城壁を出ている記録は残っておらず、衛兵達は買収済。

 普段の伝書鳩でのやり取りも、その内容は目を通した後すぐに処分している。

 そして、密偵からの報告が重大な機密をともなう時、痕跡が残らぬよう処分するのは…… " 人 " に対しても同じであった。

 帝国から持ち込んだ、火槍の設計図

 それをタランに渡した密偵は…すでにこの世に存在しない。



 であるから、帝国使者の指示で新たに何者かが大神殿に現れた時も、いったいその人物が誰なのか、タランはわからぬままだった。

 武官らに引きずられるように運ばれてきたソレは、頭に麻袋を被せられた──裸の青年。


──ドサッ


 最後、タランの目の前に放り投げられた身体が床に倒れる。生傷だらけの白い裸、赤く腫れた背中、そして……もぎ取られた左腕。


「…………!?」


 足元のソレを見てタランが後ずさったのと、帝国使者が前に進んだのは同時だった。

 使者の男は倒れた青年の頭を掴み、顔を覆う麻袋を取り去った。


「‥‥き‥‥貴様‥‥‥!」

「──…」


 タランの表情がみるみる変わる


「何故──?‥‥貴様が‥‥此処にいる‥‥!?」


 亡霊でも見たかのような戦(おのの)きよう。

 そうなるのも仕方ない。上目遣いでタランを見据えたその青年は、すでに二回──死んだハズの人間だった。

 シアンは、目の前のタランにしかわからないくらいの微かな笑みで、相手の恐怖を煽り立てた。



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