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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第36章 復讐者の記録──伍
────……
──…
……
『 やってくれたもんだなシアン──…憎たらしい可愛い駒(コマ)が、ついに俺を裏切るか? 』
『 ……何の話ですか 』
帝国の朱禁城、仁武殿。
いつもは多くの臣下が集まり政論をおこなうその場所に、今は皇帝であるヤンと、数人の重臣がいるだけだ。
玉座に鎮座(ちんざ)するヤンの御前に引っ立てられた罪人が、その真ん中に座っている。
『 お前はこの一年…じつに使えるコマだった。なにせ先帝の代の重臣はほとんど粛清したからな…人手不足もはなはだしい。お前の有能さは役にたった 』
『 ええお陰様で。昼となく夜となく働かせて頂けております 』
『 そこの承相どもの嫌がらせにも堪えながらな 』
『 …っ…気付いているなら対処して頂きたいですね 』
『 まぁそう言うな、それはそれで楽しめたさ 』
罪人として武官におさえられているのはまだ若い青年で、しかも周りの帝国人とは似つかぬ容姿であった。
その青年を見下ろし冷嘲するヤンが、ふいに声色を落とす。
『 ……さて有能なる太袍官(たいほうかん)よ。
そろそろ訳(わけ)を聞いてやろうか 』
『 …… 』
『 お前……火槍(シャルク・パト)の機密をキサラジャの密偵に流したろ? 』
黄色地の龍袍(りゅうほう)に身を包むヤンは、いつものように片手に煙管を扱いながら…ゆっくりと問う。