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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第39章 偽りの色

 アシュラフは、椅子に拘束されたシアンを見下ろす位置で立っていた。

 悶えるシアンを見つめる顔に笑みはなく、相も変わらず何を考えているのかわからない。

「…っ…陛下、この者の荷をお持ちしました」

「そこへ置け」

「……っ」

「……何を見ている?荷を置いたなら下がれ。それとも貴様らも加わるか?」

「い、いえ…っ」

 ゴクリと喉を鳴らした侍従ふたりにそう言い放ち、すぐに退室させる。

 その間も王の目はシアンに注がれたままだ。

 無毛の白肌にぬり広げられた香油が、燭台の焔を映し…てらてらと淫猥に光る、その様を、ただ見つめていた。

「…へい‥‥か‥‥//
 …‥御許しを…‥っ‥…どうか」

 その視線にすがりつくような声で、シアンが懇願する。

「陛下の御前でっ‥…あらぬ無礼を犯しました、これ以上‥見苦しい姿で……陛下の目を穢すわけには……ッッ…」
 
「……」

「…‥鞭打ち でも 構いません!‥‥信用できぬと仰る なら、護衛の件を…‥白紙に‥‥」

「──ならぬ」

「‥‥ッ」

「お前はこの部屋から出る事を許さぬ、西国の間者よ。その淫らな身体でラティーク・タランに取り入ったようだが…俺には通じない」

「‥‥‥!?」

 シアンの潤んだ目が見開かれる。

「陛下っ…私は西国の者では ありません…!この肌は、娼館にいた頃の!──…《 ギョルグ 》の名残でございます」

 透けるような白皙の肌──。シアンのコレは、売り物として " 造られた " あくまで人工の産物だ。

 しかしアシュラフの疑いの眼差しはますます鋭くなるだけだった。

「嘘を吐くな、シアン・ベイオルク。
ギョルグ(神に捨てられた子)とは……白い肌と髪、くわえて其の目のうちに、赤い瞳を宿した者だ」

 お前は違うと、吐き捨てる。

 そしてアシュラフは長いカフタンをひるがえして背を向けた。


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