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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪
“ 復讐が目的じゃないだなんて ”
“ あなたは……誰もかれも眼中に無いというの?わたしのことも ”
“ だからこそ、今のわたしを邪魔だと判断しようものなら、あなたは躊躇なく……っ ”
細めた目でこちらを見下ろした彼の横顔の、その温度の低さに、ハナム王妃の本能が震えた。
その感情の無い瞳は……たとえ相手が誰であれ、目的の為に切り捨てるのだろう。
「わかりましたわ……っ」
ハナム王妃は引き下がるしかなかった。
最後に彼女は、アシュラフ王が寝ている奥の間にチラリと目を向けた後──
脱いだ外套を手にしてシアンを睨んだ。
「……わたしがあなたを疎ましく思ったのは、わたしが陛下を愛していたから」
「──…」
「わたしがあなたを殺そうとしたのは……っ
陛下があなたを、愛していたからよ……!」
" 今の " シアンにその気持ちは理解できるだろうか。
愛は憎悪に簡単に変わり、憎悪は簡単に、人の道を歪ませる。
「扉を開けてちょうだい」
「…かしこまりました」
命じられたシアンが戸を開けると、長い裾を石床にはわせて、ハナム王妃が前を横切った。
……ごめんなさい
すれ違いざまに彼女がつむいだ謝罪も、シアンの心に僅かな波紋すら生み出せない。
くだらない。彼はたったひとつの目的を果たすため、それだけを思いこの場所にいるのだから。
───