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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第5章 籠の鳥の境遇
「はいこれ、使いなよ」
その少年は、金属器にいっぱいの水を汲んできた。
飲めというわけではないらしい。手拭いを添えて、勢いよくシアンに差し出す。
中の水が跳ねた。
「身体拭きたいかと思って持ってきた!」
その間、シアンは右手と口を使って器用に下着を巻き付けていた。
左手を使おうとしない彼の様子を見ながら……その理由を察した少年は表情を曇らせる。
「だっだっ…大丈夫か?オレが手伝うか?」
「……」
シアンは無言で首を横に振る。
……しかし、下着を巻き終わるまでずっと水入れを持って動かない相手を見て
「……ありがとうございます」
シアンは諦めたように礼を言い、それを受け取った。
「君は…オメル、と言いましたか?」
「そう、オレは歩兵師団のオメル。キミは?」
「シアンです。近衛隊に志願して、先ほど槍兵師団の将官殿に入隊を許可されました」
「はいったばかりなんだな。はじめましてシアン!」
「…?」
場違いにも人懐こい笑みだった。