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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第45章 Epilogue──春待つ砂丘の花々よ
───…
あれから、二年
「牢を出ろ、ジフリル・バヤジット」
カシャンという音とともに、鉄の錠がはずれて落ちた。
薄暗い獄舎の一角。
そこに並ぶ中ではいくらか上等な獄牢で、木の寝台に座っていたバヤジットは、開けられた戸に目をやった。
「…今朝は早いな。まぁ構わない。俺もそろそろ動きたい気分だった」
いつもの労働と思い立ち上がる。
が、迎えの相手が普段と違うようだった。
…というより、武官ではない。
文官の服装とも異なる。この男は……?
「……?誰だ」
「なんだ……俺の顔を忘れたのか、指切り将軍 。二年ぶりだからなぁ……お前のほうは……少し痩せたが、いい男なのは変わらんな」
「…っ…まさか貴様は」
暗い中で目をこらすと、そこにいるのは、上等な龍袍(りゅうほう)に身を包む白髪の男だった。
左の目は眼帯に隠されている。
「皇帝にむかって " 貴様 " はどうなんだ?首を飛ばすぞ、気を付けろ」
「……!」
帝国の獄舎で囚われているバヤジットは、そこにいきなり現れた帝国皇帝に面食らう。
その反応でとりあえず満足したらしいヤンは、状況ののめないバヤジットを牢から出し、外へ連れ出した。