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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第5章 籠の鳥の境遇
オメルは一気に大人しくなる。
最後のひと言は余計だったかもしれない。そうわかっているが、シアンは敢えて厳しく言ったのだ。
向けられる好意は不快じゃない。
だが、駄目だ。
コレはそんなふうに讃えてはならないものだ。
「わかったかい?」
「う、う…ん…」
オメルの返事はしまりがなかった。
それもそうか。シアンの生き方を知って軽蔑したのだろう。
だからシアンは「他人をもっと警戒しろ」と告げたのだ。綺麗な物に、甘い誘いに、裏が無いとは限らない。
「……」
厳しめに諭されたオメルが泣き出すかもしれないので、シアンはとりあえず手近な椅子に座り、彼を見守ることにした。
「…っ」
「──…」
「で」
「…?」
「で~~~、…………も」
俯いたオメルが何か言っている。
「でも!シアンはキレイだ……!」
「───」
直後、顔を上げた瞬間に彼は大声で叫んだ。
シアンが呆れて言葉を返せないでいると、オメルの早口が炸裂する。
「理由なんてあってもなくてもシアンはキレイだろ!商品がどうとか意味わかんないよ!だってそれはっ…生きていくためのキミだけの武器なんなら、それでずっと戦ってきたってことは、だから、つまり、すごく強い武器ってことで…強くてキレイな武器なんだから、そのおかげで生きてるならもっと見せびらかして自慢していいんだ」
「???」
「オレの母ちゃんは商人に襲われたときっ…イヤだって抵抗して、それで殺されたけど……!そんな母ちゃんは格好いいけど、でも、でもさ、格好いいけど死んじゃったんだ。死んだらきっと、ダメだから……」
「……」
「死んだらダメだから……死んでないシアンは……強くて格好いいよ。オレは、憧れる……っ」
「……?」
可笑しな話だ。
オメルの話が真実なら、彼の母親は誇りを守って死んだ。確かに尊厳を守ったのだ。その魂は神の祝福とともに陽の国に受け入れられたろう。
それに比べ、自らのなんと穢れたことか。
「シアンはキレイだろ!?」
「んー…」
シアンはオメルの言葉を理解できなかったが、まだこれだけ喋るなら泣き出すことはなさそうだと、ひとまず抗弁(こうべん)するのをやめておいた。
──…