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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第6章 片腕の兵士
翌朝
食堂は隊服を身に着けた男達で溢れかえっている。
「おっ……よぉ」
「……」
そんな朝食の席で、シアンは見知った男とはち会う。
昨日ここでシアンを襲い、その途中で逃げていった二人組のひとりだ。
昨日の去り際が無様だったという自覚があるのだろう。どこか気不味そうだ。
「おはようございます」
わざとらしくシアンが挨拶すると
「お……おう」
小さな声で返事をして遠くの席に逃げて行った。
この国の朝食は、多くの種類が用意された中から少量ずつを取り分けるのが伝統だ。一日二食のため、量も多い。
加熱した野菜を油であえたサラダ、薄切りの肉、白と緑のオリーブの実、ブドウやカユス(杏)といった果物、そしてチーズ。
遊牧民であったころの名残りだろう…とくにチーズの種類は豊富である。一般的な角切りの白チーズに加え、ロイと呼ばれる甘いチーズや、クセの強いもの、月桂樹などの草を練りこみ味を付けたものもある。
さらに釜を埋めた石製のカウンターでは、豆のスープが振る舞われていた。街のバールでも定番の料理だ。
近衛兵たちはそれらを器によそった最後に、山のように積まれたピタ(乾燥させたパン)へ次々と手を伸ばしていた。