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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第6章 片腕の兵士
「シアン!ここにいたのか─…あっ」
そんな食堂にひっそりと紛れていたシアンの背後から、軽快な声でオメルが話しかけた。
その声に反応して数人が二人に注目し、それに気付いたオメルは慌てて声を潜めた。
「ごめん大声だして…」
「大丈夫。おはよう」
「ええ?シアンはそれだけしか食べないのか?」
注意を引く前に食堂から出ようとしたシアンだが、その器の中を見たオメルは驚いて引き止めた。
「そんなのじゃ足りないだろ!訓練中に倒れるぞ?」
「…っ…いや…別に」
シアンが右手に持つ器にはオリーブの実が三つと、チーズがひと欠片、空いたところにブドウの実がいくつか散らばっているだけ。
「あいつ等に邪魔されたか?くっそーシアンにまでー」
何を勘違いしたのかオメルは急に悪態をつく。
シアンは落ち着けと彼をなだめた。誰かに邪魔をされたのではない。
「僕はこれでいいんだ。もともと小食だから」
「いやダメだ元気でないぞ」
「駄目?駄目とかそういう話ではなくて……」
「いやダメだ元気でないぞ」
「…………二回言ったね」
「待っといてオレが取ってくるから!」
「???」
シアンの話を聞かずオメルが厨房へ引き返す。ピタを取ろうと男達の間に割り入っていった。
…だがすぐに、横の兵士に突き飛ばされて小柄なオメルは倒れた。
突き飛ばした男は泥棒野郎とオメルに罵声を浴びせ、お前は最後の残飯をさらうのが仕事だと笑っていた。
厨房で働く使用人は見てみぬふりをしている。
「ひとつくらい…っ」
「向こうへ行っていろ!」
周りの隊員も同じ態度だ。何度も床に転がされるオメルを遠くで眺めながら、シアンは手にしたブドウの実を口の中に入れていた。
──