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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第7章 餌はしたたかに振る舞う

 あたふたオメルは置いておき、荒ぶる男達に彼は酒を差し出した。

「どうぞお飲み下さい」

「そんなので騙されるか。全部見てたんだぞ?温めただけで味が変わってるわけがない」

「飲んでみなければわかりませんよ」

「試す価値もないだろう。だいたいお前はクルバンの癖に俺達に対して──ッッ」

「どうぞ(ニコリ)お 飲 み く だ さ い」

「ッ…!? お…おう…!?」

 何故か確信のあるシアンの態度は、近衛兵たちが尻込みするほどの余裕っぷりだった。美しい顔の意味深な迫力に気圧されて、酒の器を受け取る。

「味は如何でしょうか」

「いかがと言われても別に何がどう変わるってんだこんな…──っ、……ん?これ、は……!?」

「……」

「なんだこれっ…味が全く…違う…!?」


ザワッ


「美味くなってる……のか……!? 不思議と甘いぞ」

「貴様もう酔っ払ってるだろう。器をかせ!」

「俺にも飲ませろ!──…!」

「変だな…!! 酒が美味くなっている…!!」

「鼻につく香りも消えてるな。飲みやすい」


“ え、どおいう、こと…? ”

 何のことやら分からずじまいのオメルはまだ怯えているが、酒を飲んだ近衛兵の反応は良好だった。

「今は温かいままですが、再び冷やして飲んでも美味いですよ」

「そりゃあいいな!やるじゃないかクルバン」

「皆さんのお役に立てたなら嬉しいです」

 酸味が消え作り立ての味に戻った葡萄酒。機嫌を直した面々はシアンへの怒りを捨てて晩酌を再開する。





......



コトン


「──…はい、君にはお水」

「……。シアンは、魔法使いみたいだ」

「魔法なんて使えないさ。僕はね」








───…




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