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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第8章 復讐者の記録──壱
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酷く寒い夜だった。あの日──
手網を失い夜通し走るラクダの背で、かろうじて意識を保つ少年は寒さに震えていた。
季節は初冬。砂嵐が迫る砂漠の中を、あてもなく走る。
乾燥した空気が殴るように吹き付ければ人の肌など簡単に凍らせてしまうのだ。
切り落とされた指の痛みが──徐々に遠のいていく。
彼をラクダに固定している大きな皮の羽織から、左手だけがダラりとはみ出していたらしい。
痛覚さえも奪われた左手が、跳ねるラクダの動きに合わせて人形のようにガクガクと揺れていた。