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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第8章 復讐者の記録──壱
それを見送った客達の目が、女亭主の背後に立つ少年を捕らえた。
『 そいつは新入りか? 』
『 ついさっき雇ったばかりさ。まだ右も左もわからない新品さね 』
『 いいねそういうの!初物は俺にゆずってくれよ 』
『 馬鹿言っちゃいけないよ!こんなべっぴんそういないんだ。準備もなしに遊ばせて、壊されちゃあたまらないよ 』
騒がしい声に蓋をするように、その上をいくけたたましさで女亭主が叫んだ。
そのやり取りを、少年は他人事のように眺めている。
彼等は何を話しているのだろう。
自分は何故、こんなところにいるんだろう。
何もかも……どうだっていいのに
……ああ
『 ──……、さい…』
『 ……?』
『 うるさい……… 』
場にそぐわない静かな声で、少年が呟く。
誰が言った?
慌てる面々が暫くあたりを見回し、暴言の主がこの大人しそうな少年であったと知った時──店は静寂に包まれた。
怒り出す者がひとりもいなかったのは、少年の弱々しい声があまりに痛ましく……そして不思議な迫力に満ちていたからだろう。
....カタン...
『 ──…今夜はいつになく静かですね。
酒に毒でも盛られて死にましたか?皆々さま 』
そんな中、二階へと続く階段の踊り場で、彼等を見下ろし嬌笑する者がいた。