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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第8章 復讐者の記録──壱

『 そうかい……、あんたは死んでるのかい 』

『……』

『 死にたいなら今すぐ野垂れ死にさせてやろうと思ったけど、死人ってならその必要はなさそうだねえ?だったらその身体、好きに使わせてもらおうじゃないか 』

 少年を救ったその女亭主は、有能で打算的な人間だった。

 彼女はすぐに少年を宿に連れ帰り、これからここで働くように命令した。

『 あんたはここで身体を売って客をとるんだ。客ってのは男が多いけどたまに女もいる。この宿の客は金持ちの商人が多いから、上手く気に入られればいい暮らしができるよ 』

 女亭主の話を聞いても少年は理解できない。

 身体を売る?手足を切り取って差し出せばいいのか。そんな想像が限界だった。

 そう言えばと……切り落とされた指の事を思い出した少年は、指どころか、左腕の肘から下が失われているのに気が付いた。

『 壊死(えし)した腕は切り落としておいたからね、まずはその治療ぶんを稼いでもらうよ。なぁに心配しなくても欠損した美少年を好む変態は多いさ 』

 布で巻かれた切り口をぼんやりと眺める少年は、動揺する気配がない。

 さすが死人といったところか。女亭主は感心した。



 なにも今すぐ客を付けようってんじゃないと、女亭主が言う。

 先ずはどんなものか見てみろと言われ、彼女の後に続いて少年は店の中に入った。

 いくつも用意された机に男たちが座って酒を飲んでいる。

 給仕をしているのは若い青年達で

 酒器を運び、席につく男達に呼び止められては何か囁かれている。

『 ぁひッ……ァァっ‥‥そんな… 』

『 おーおーもう出来上がってるなぁ。掴んだだけでおっ勃てて可愛いなぁ。ほら、イかせてほしいのか? 』

 そして複数人に囲まれた給仕の青年が、赤い顔をして身悶えている。彼の下半身には男達の手がいくつも伸びていた。

『 ちょっとあんた達、遊ぶんだったら宿代払ってそっちに行きな 』

『 ははは、女将は相変わらず厳しいねー。んじゃあそろそろ場所を変えるか 』

 すかさず女亭主が止めに入ると、ひとりが笑って残りの酒を飲み干した。

『 俺はこいつにする、金は? 』

『 ここだよ 』

 席を立った男は先ほどの青年の肩を持ち店の出口に近付いてくる。女亭主に金を渡し、代わりに部屋札を受け取り外へ行った。


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