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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第1章 王弟が散った日
手綱を持たれぬ獣など、行く宛もわからない。
それでも
「どうか、此処では無い場所へ…っ」
何処でも構わない
遙か遠く──遠く
どうか
二度と、その顔を見なくてすむように
《 どうしたら…兄さまに愛してもらえたの? 》
砂漠の流砂(りゅうさ)に引きずり込まれたかのような、底無しの絶望へ沈んだその声を──
呪いの言葉を
二度と耳にしなくてすむように
───…
肌を削る冷風が国中を吹き荒れたこの夜
幼き王弟はその命を散らした。
国王暗殺未遂
都外に逃亡の末、砂漠の獣に襲われ死亡。
そして兵士のひとりが持ち帰った証拠の 指 は、王族の死を告げるにはあまりに貧相な物であった。
しかし、彼の死の真偽は…それを望む者共にとって重要ではなかったのだろう。深く追求されることさえ無かったのだから、王宮での彼の扱いがわかると言うものだった。
長くつづられる国の歴史の──ほんの一節に刻まれただけの数奇な命。
王弟の齢(よわい)は僅か十一。
十二の生誕日を迎える、ちょうど前日の出来事であった。
───…