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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第2章 壱
町人町といえば、江戸でも名の知れた大店ばかりが軒を連ねる商人の町で、今、彼が歩いている大通りはその中でも特に構えの大きな店が居並んでいる。
目的の店は、そんな大店ばかりが続いた大通りの片隅にひっそりと佇んでいる。小さな筆屋と仏具屋が大通りを挟んで向かい合う四ツ辻で、大通りは終わる。その仏具屋の傍らに〝花や〟という絵蝋燭屋があった。嘉門はいつも和泉橋町に帰るときは、この道筋を通る。自然、花やの前をも通ることになる。