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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第2章 壱
 娘はその日から殆ど毎日、店先に座るようになった。何をしているのかと注意深く見ると、大抵は熱心に本を読んでいるようだった。
 この娘があの時、傘を貸してくれた女と同一人物なのか。口に出して問えば済むことなのに、嘉門はなかなか言い出せないでいた。学問は苦手で、剣の稽古ばかりに明け暮れている武辺者の嘉門に、女を口説くすべなどなかった。それに―、はっきりと訊ねて、違うと否定されたら、そこで何もかもおしまいのような気がしたのだ。
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