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君とセカンドラブ
第16章 生きる喜び
「本当に一人で大丈夫かい?」
葵は母の遺品整理やアパートの引渡しなどで
今しばらくは東京に戻れそうもなかった。
手伝ってあげたい気持ちはあるものの、
やり残してきた仕事が山のように残っているので、
誠一はどうしても東京に戻らなくてはいけなかった。
せめて君も手伝ってあげたらどうだい?と
誠一は隣の明日香の顔をチラリと覗き込んだ。
自分が求められていると気づいた明日香は
「ママ…ごめんなさい…
私、疲れているの…一人の時間が欲しいのよ」
明日香はクタクタだった。
キャンプの夜に男の子4人の筆下ろしをしてあげて、おまけに小太りで一番タイプでもない豊島に中だしまでされて体も心も傷ついていた。
そこに降って沸いたような祖母の死…
今は何も考えることができずに
ひたすらに自分の殻にとじ込もって心と体を休めたかった。
「いいのよ明日香。
疲れているのは顔を見ればわかるわ
それに、母の遺品整理と言っても女の独り暮らしだったからそんなに時間もかからないと思うし…」
「ごめんなさいママ…」
ハグを求めてきて泣きじゃくる明日香の異変に
葵も心身共に疲弊していて気づいてあげれなかった。
親子を引き離すように電車の発車のベルがホームに鳴り響いた。
「そうだ、遼太の奴ならまだこっちに残っているから後で手伝いに行くように連絡しておくよ」
そう言って誠一と明日香は東京に向かって電車の車内に消えた。