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君とセカンドラブ
第18章 新しい家族の形
「結局、形見として残しておくものはほとんどなかったわね」
東京へ向かう電車に揺られながら
ボストンバッグひとつに収まってしまった母の遺品を大事そうに抱きかかえながら葵は独り言のように呟いた。
「まさか母さんがアレを形見として貰い受けるなんて思いもしなかったよ」
遼太の言う「アレ」とは黒いバイブの事だった。
無機質なモノだけれど、愛用していたであろうソレには母の温もりが残っている気がして、葵は貰い受けることにしたのだ。
「じゃあ…今夜はソレを使って葵をヒィヒィ言わせてやろうかな」
「そんなこと出来るはずないじゃない
家に帰れば誠一さんも明日香もいるんだから…
バイブは…平日の昼間にみんなが学校や会社に行った後で、こっそりと自分で使うわ」
「ちぇっ、残念だなあ…」
そうか、こうして葵と二人だけで電車に揺られていると新婚気分に浸ってしまうけど、
葵はれっきとした自分の母であり、
家には父親も妹もいるということを頭の中から消し去ってしまっていた。
「なあ…葵…
お父さんと離婚してくれないか?」
家に帰れば、待っていましたとばかりに
夜中に夫婦の営みが始まるかもしれない。
葵は義理とは言え母親に違いないけど、
遼太の心の中では葵はたった一人の愛する女なのだという認識だった。
そんな愛する女が他の男に抱かれるなんて、これほど不快な事はない。
しかも、その抱かれる相手は、れっきとした自分の父親なのだから厄介だ。