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The Bitch (ザ、ビッチ)
第2章 2024年2月17日土曜日
 6

「そういえばぁ、オックンは高校時代から悠里の事好きだったもんねぇ」
 京っぺのそんなツッコミに少しドキっとしてしまう。

 だが、37歳の今となってはそれも青春の甘い想い出であり…
 四人の既婚者にとっては少しだけの青春への回顧と息抜きになっているのだと思われた。

 わたしは独身だから…
 背負っている重みが既婚者とは根本的に違うし軽い。

 それにわたしは好きで独身でいるのだから…
 心には全くといっていい程に未婚に対しての焦燥感は無い。

 三ヶ月で遊んでいる男に飽きてしまう様な事に悩んでいる位であるから…
 本当にお気軽、お気楽なのである。


「ふぅぅ楽しいわぁ」
 
 そう本当に楽しい…

 そして少し飲み過ぎてしまった…

「あ、トイレね…」
 わたしはトイレに向かう。

 
「あ、オックン」
 するとトイレの洗面台でオックンが手を洗っていた。

「あ、ゆ、悠里」

「ふぅ、懐かしわね、なんかオックンは変わらないね」
 わたしはそう声を掛ける。

 実はわたしはさっきの京っぺの言葉のせいで妙に彼を意識してしまい…
 あまり、いや、殆ど話しをしなかった、ううん、出来なかったのだ。

「いや、もうオジさんだよ…
 それより悠里の方が全く変わってなくて…」

「え、あ、変わってなくてってぇ?」

「あ、いや、昔よりいい女になってる…」

 そのわたしの訊き方は…
 ズルい訊き方であった。

 そう訊き直したならば大抵の男達はそう答えるに違いない…
 そんな訊き方をしてしまったのだ。

 これも、長く独身を謳歌している…

 そして遊んでいる女のズルさ…

 と、いえた。

「あら、ありがとう…
 アナタも上手になったわね…」

 心が騒ついてきていた。


 あ、わたし…

 酔ってきてる…

 ああ、まずいわ…

 そう、これはわたしのズルさ…

 ズルさ…

 それは、さり気なく男を誘う…

 いや、誘う様に男に仕向ける…

 誘導する…

 わたしのズルさ…

「いや、本当だよ、あの頃より全然…」
 
「全然…て?」

「あ、う、うん、い、いい女だ…」

「だから?…」

 わたしは洗面台の鏡に映る彼を見つめ…
 唇を舐める。

 あぁ違うの、ヤバい…

 わたしの淫らな…

 メスの…

 ビッチな本能が…

 再び目覚めてきていた…



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