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The Bitch (ザ、ビッチ)
第6章 2024年3月14日木曜日
 12

 もう二度と…
 あの苦しさ、悲しさはいらない。

 だから、だからわたしは…

 セフレで…

 男漁りのビッチなクソ女でいいし、いたい…
 と、今までは思っていたんだ。

 ビッチ女でいいんだ…

 そう…

 それでいいんだ。

 だから、だから、今回の音信不通はいいきっかけじゃないか…

 もう一度、わたしらしく、いや、わたしらしいビッチ女に戻るべきなんだ…

 よしっ…

 わたしはグラスに残っていたカクテルをグイッと飲み干し…
「彩ちゃん、ご馳走さま、とりあえず帰るね」
 そう云って立ち上がる。

「えっ、あっ、ゆ、悠里さん…」
 彩ちゃんは少し慌てた感じに応えたのだが、ちょうど今は他のお客様の対応にも忙しい。

 そのままわたしは店を出た…

 よしっ、わたしに、本来のわたしに戻ろう…

 そしてわたしはバーの反対側にある自宅マンションの部屋には帰らずに…
 夜の巷の繁華街へと歩いていく。

 そうよ、そう…

 本来のわたし…

 ビッチ女に、クソ女に戻ろう…

 幸い、今夜は、いや、今夜も不意なビッケのラインや電話には惑わされたり、揺らいだりはしないはず…

 この音信不通はちょうどよいタイミングだわ…

「いらっしゃいませ」
 わたしはもうひとつの行きつけのワインバーを訪れた。

「どうぞカウンターへ」
 そしていつものカウンターの席に座ると…
 これ幸いに一人飲みの男性客がカウンターに座っていたのだ。

 そうよ、そう、出会いなんて、こうしていつでも、簡単にあるんだから…

 ビッケ、ヤツにこだわる必要なんてないんだから…

「お一人ですか?」

 そしてその男は、まるで絵に書いたように、いや、安っぽいドラマのワンシーンの如くに…
 わたしに声を、ナンパを仕掛けてくる。

 だってわたしは、声を掛けられる様にその男に甘い視線を向けたのだから…
 物欲しそうな女の、ビッチな下品で軽い女の目を向けたのだから。

 そうよ、そう…

 ビッチなわたしには簡単なことなのよ…





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