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The Bitch (ザ、ビッチ)
第6章 2024年3月14日木曜日
 13

 だってわたしは、その男に甘い視線を、物欲しそうな女の、ビッチな女の目を向けたのだから。

 そうよ、そう、このビッチ女のわたしには…
 男を漁る…
 ナンパされる…
 そんな事は簡単なことなの。

 男なんて直ぐに見つけられるのよ…

「何かご馳走させて…」

「あら、ありがとう、じゃぁ、シャルドネ系のシャンパンを…」
 わたしはそう言いながら、いや、この男もだ…
 お互いに上から下までを一瞥する。

 年齢は40歳前後…
 スーツ姿…
 一見して仕事帰りのサラリーマンであろうか…
 髪型はややサイドを軽く刈り上げている、爽やか営業マン風であろう。

 そして…
 薬指にはリングがある。

 妻子持ちは…
 本来のビッチなわたしには、妻子持ちは大好物であるのだ。

 だって40過ぎの男の独身なんて…
 自分のダメさ加減を証明している様なモノだから。

 それにそのリングを隠さないところが、遊び人である所以をも表しているとわたしには思える…

「じゃ、出会いに…」
 そしてこの安いドラマの様なクサいセリフに…

 チン…
 わたしは微笑みながらグラスを合わせた。

 いいじゃないか…

 こんなビッケに対して心を迷走し、一人イラ立っているクソ女のわたしには…

 こんなあからさまなナンパ男がちょうどいい。

「お名前は?」

「え…うん、そう…ビッチよ…」

「えっ、び、ビッチって?」
 男はそんなわたしの唐突な言葉に驚いた。

「え、あ、ウソ、ウソよ、冗談よ…
 わたしはね…ゆ、り…」

 そうクソ女、ビッチ女の…

「ゆりさん…いい名前だ…」

 そうわたしはクソ女、ビッチ女の…

 ゆり…

「俺は……………です」

 わたしは聞いてはいなかった…

 名前なんてどうでもいいから…

 ただ…

 ただ、今夜のわたしを…




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