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The Bitch (ザ、ビッチ)
第2章 2024年2月17日土曜日
 8

「あら、もうこんな時間だわ」
 京っぺが腕時計を見てそう呟く。

 時刻は午後11時半を過ぎていた…

「さすがにそろそろ帰らなくちゃぁ」

 楽しい時間はアッという間に過ぎてしまう…

 わたし達は惜しみながらも解散をすることにした。

「じゃあ悠里またねぇ…
 これからはマメに連絡取ろうねぇ」

「うん、わかった、ありがとう」
 そして解散して四人はワインバーを出て、わたしと反対側に歩いて行った。

 思わぬ再会に心が高まり、高鳴っていた…
 そして違う昂ぶりも揺らいできていた。

 わたしはそんな高まりと昂ぶりに…

 そしてある予感がしていて…

 いつもの行き着けのバーに向かう。

「いらっしゃいませ」
 オーナーバーテンダーの彩ちゃんが笑顔で迎えてくれた。

 さすがに週末の土曜日の夜であるから、カウンターのみの店内は賑やかであった…

「ここ空いてますよ」
 だが、いつものわたしのお気に入りの席が偶然空いており、そこに導かれ…

「いつもので?」

「うん、お願い…」
 そして席に座る。

 ブー、ブー、ブー、ブー…
 するとそのタイミングでバッグの中でスマホが響いてきた。


 あ…

 予感は当たりであった…



「もしもしオレだよ」

「あ…ら、オックン…」

 彼の声を聞いた瞬間…

 心がザワザワと騒めき…

 いや、ドキドキと昂ぶり…

 いいえ違う…

 ズキズキと…

 疼き始めてきたのである。


「今、みんなと別れたんだけどさ…」

「うん…それで…」

 わたしはスカす…

 いや、焦らす…

「え、あ、う、うん…」

 そしてもっと焦らす…

「それで…」

 ビッチ女の本能が…

 ゆっくりと目覚め…

 女のズルさを演出する…

「あ…うん…い、いや…あの…」

 だけどオックンは…

 多分、彼は慣れてはいないらしい…

「あの…ね…
 わたし…今ね…」

 彼は…

 オックンは…

 昔と変わらないみたい…

 素直な…

 正直な…

 ウソ、嘘のヘタなままだ…

「わたしね…今ね…
 なんかさぁ、飲み足らなくてさぁ…」

 仕方ない…

 誘い水を掛けてあげようか…





 
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