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The Bitch (ザ、ビッチ)
第2章 2024年2月17日土曜日
 9

「わたしね…今ね…
 なんかさぁ、飲み足らなくてさぁ…」

 仕方ない…

 誘い水を掛けてあげようか…

「行き着けのバーで飲んでるの…」

「え…あ、あ…わ、ワイルドだなぁ…」
 
「うん…ワイルドでしょう」

「あ、ぁぁ、ひ、一人で?」

 やっぱり昔のままだ…

「ふ…一人よ…」

 思わず噴き出しそうになる…

「え…あ…」

 仕方ないか…

「来る?…」

 仕方ない…

 昂ぶりは治まりそうもないし…

「あ、ああ、い、行くっ」
 そしてわたしは、このバーの場所を教えた。

「す、直ぐに行くから」

 仕方ない…

 まぁ、そこが彼、オックンのいいところでもある…

 いや、違うか…

 わたしがビッチ過ぎるんだ…

 そう想いながらいつものカクテルを飲みながら、ふと顔を上げると…


 もう一人来るんですね?…

 と、彩ちゃんが意味ありげな目を向けてくる。

 うん…
 わたしも黙って頷く。

「さすが…」
 すると彩ちゃんが、そう呟いてきた。

 そしてわたしは笑みで応える…

 だってここ三ヶ月は…

 ビッケの…

 ペットの和哉くんとしかこのバーには来ていないから…

 だから…

 いや、違うだろう…

 彩ちゃんにはわたしのことなんて…

 わたしのビッチ女過ぎる悪癖なんて…

 全部お見通しなんだから…

 悪性なビッチ女だって十分知っているから…

 カラン…

 入口の呼び鈴が小さく鳴った。

「いらっしゃいませ…」

 彩ちゃんが声掛けし…

「こちらに…」

 わたしの隣の席に指を差す。

 さすがだ…

 わたしも彩ちゃんに、さすが、と云いたい…


「あ…ゆ、悠里」

「ふ…来た…のね」

 やや緊張気味なオックンの顔を見て…

 また、噴き出しそうになってしまう…

 堪らないわ…



 そんな男の可愛らしさが…

 更にわたしのビッチさを…

 ビッチ女の衝動を…

 昂ぶらせてくる…





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