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The Bitch (ザ、ビッチ)
第2章 2024年2月17日土曜日
 10

 オックンはカウンターのわたしの隣に座る。

「いらっしゃいませ、何にします?」
 彩ちゃんがおしぼりを手渡しながら訊いてきた。

「あ、じゃ、あ、バ、バーボンの…
 あ、アーリータイムスのソーダ割りを…」
 そして二人で乾杯をする。

「久しぶりね…」

「あ、うん…」
 30歳の同窓会にはオックンは九州に転勤していたそうで、参加はしていなかった。

 そして20歳の成人式の同窓会の時にはわたしがアンダーカテゴリー全日本選抜のアジア大会出場で成人式さえ参加できなかったから、この再会は本当に…

「高校卒業以来かしらね?」

「あ…うん…そうだね…」

 さすがのビッチなわたしにも…
 少し感傷的で、感慨深い想いが心を巡ってきていた。

 そう…

 あの頃は…

 高校生時代は、まだまだ純情で純粋であったのだ。

 彼、オックンはサッカー部のエースで…
 サッカー推薦で仙台の大学に入学し、わたしは都内の有名私立大学にバスケ入学したから、卒業と同時に完全に縁が切れてしまったのだ。

 そして完全なる、約三ヶ月という短期間のプラトニックな交際でもあった…

「でもオックン、変わらないね」

「え、いや、そんなすっかりオジさんだよ、腹も出てきてるし…
 それより悠里は変わらないなぁ…」

 あの時の…

 あの頃の悠里みたいだ…

「またぁ、上手なんだからぁ…
 あれから約20年も経ってるのよ、変わったわよ…」

 わたしもすっかりオバさんよ…

 わたしはため息交じりに、そう呟く。

「いや、いや、変わらないさ…」

「あら、歳経ったらかなりお口が上手になったみたいね」
 だが、わたしの心はすっかり懐かしい想いに還っていた。

 あの高校三年生の、卒業前の約三ヶ月のあの頃の想いに…

「そんな、でも会えて嬉しいよ」

 するとオックンは何気なく…

 そう、本当に何気なくなんだと思うのだが…

 カウンターの下のわたしの脚に…

 スカートに覆われているわたしの太腿に…

 自らの手を、ふと、置いたのだ。

 あっ…




 
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