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The Bitch (ザ、ビッチ)
第7章 2024年3月17日日曜日
 23

「どうぞ…」
 ロックを外しドアを開き和哉を招き入れる…

「ゆ、悠里さん…」
 ドアを開いた途端に、和哉はそう呟きながら入ってきた。
 その彼の目は久しぶりにわたしに逢えたという事と、この出張前の行方不明にならざるを得なくなったこの数日間の諸々な出来事等の想いもあるのであろう…
 昂ぶっていた。

 そしておそらくわたしの目も…
 久しぶりな和哉の姿と、今の現状の異常なシチュエーションにより、熱く、昂ぶっていると思われる。

「ゆ、悠里さぁんっ」
 和哉はその昂ぶりを表すかの様に、そう言いながら玄関の上がり框でわたしに抱きついてきた。

「あん、な、なによ、しばらくバックレていたくせに」

 そんなわたしはとりあえず…
 逃げはしないで和哉に抱きつかせる。

 それは既に、麻耶さんからスマホ紛失という事実を訊いていたからの和哉の数日間の行方不明という事には不問できるという心の余裕からでもあり…
 そしてもうひとつ…
 心の中に燻り始めてきていたビッチなクソ女の衝動の昂ぶりからでもあった。

 だからこそ、抱きついてきてキスをしようとしてくる和哉の顔を、いや、唇を軽くいなし…
 和哉に対して意地悪的な態度である、クルっと踵を返してリビングへと歩き始めるという冷静な動きができたのだ。

「あ…」
 そんなわたしの冷静な動きが必死な和哉には有効らしく、まるでご機嫌取りの尻尾を振るペット、いや、ビッケみたいにわたしの後ろを付いてきた。

 ま、玄関に麻耶さんのヒールが一組脱いで置いてあるのを気付かせたくもなかったという理由もひとつはあった…
 どっちにしても和哉にはそのヒールには気付かないではあろうが。

「え…」
 だけど、リビングテーブルの上に置いてある二組のコーヒーカップの存在には気付いた様で…
「誰か来てたんすか?」
 と、二組のコーヒーカップを見ながらそう言ってきた。

「え、あ…う、うん…」
 その意外な和哉の指摘に一瞬、ドキッとしながら…
「あ、う、うん、あ、彩ちゃんがね、ちょっとね…」
 と、慌てて言い訳をする。

「あっ、彩さんすかぁ…
 そうっすよね、彩さんのお店お休みっすもんねぇ」
 すると和哉はすんなりとそう言ってきたのだ。

「えっ、あ、知ってたんだ?」
 わたしは動揺を隠しながら問い返す。

「あ、は、はい、さっき……」

 


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