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The Bitch (ザ、ビッチ)
第7章 2024年3月17日日曜日
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「またそのうっとりとした和哉の表情がねぇ…
 わたしのさぁ、子供の頃に飼っていたペットのさぁ…
 ミニチュアダックスの『ビッケ』のおあずけからのいい、への喜悦の表情にさぁ……」

「……………」

「そ、そう、そのビッケの……………」
 と、突然…
 そう、そこまで話してわたしは突然に、心の昂ぶりと高ぶりが一気に、スーっと波が引くように下がったのである。

 なぜか…

 まるで、醒め、冷めたかの様に、急に、たった今まで心の中で荒々しくウネリ、騒ついていたビッチでクソ女の感情の激しい昂ぶりのウネリが突然消えてしまったのだ。

 え…

 急に、突然、この目の前に座り、憔悴と悲しみ、哀しみに打ちひしがれている麻耶さんの潤んだ目を見て、そしてあの昔のペットのビッケのと、さっきまでの和哉の喜悦で愉悦の目を思い浮かべた瞬間に…
 サーっと、感情の昂ぶりの波が消えてしまったのである。

 いや違うのかも…

 このまるで麻耶さんをイジメ、虐めている様な自分の姿のこの光景が、突然、第三者からの俯瞰的視線のイメージで脳裏に一瞬、浮かんだのだ。

 そしてまるで電光石火の速さで…
 バカバカしいっていう思いの思考が脳裏に走り抜けたのである。

 そうバカバカしい…
 
 別れの対価の代償として、ワザワザ麻耶さんに和哉との痴情の痴態までをも見せつけ、彼女を狂わせ、悲しませ、哀しみに陥れたのに、わたしはまだこうして麻耶さんをイジメ、虐め、更に深みに陥れようとしているのか…
 と、まるでもう一人のわたしが心の中で告げてきたのだ。

 まるで説教ではないか…

 和哉を譲るなら、もうこれ以上陥れなくてもいいんじゃないのか…

 これじゃ逆効果になってしまうんじゃないのか…

「………………」
 どうやら麻耶さんは、そんなわたしの心の揺らぎ、自問自答の騒めきに気づいたみたい…
 急にジーっと、その哀しみに打ちひしがれた目を向け、見つめてきたのである。

 いや、それはまるでわたしの心の中を覗き込もうとする目…

「………………」

 麻耶さんに和哉を譲るんだよね?…
 わたしは自らに問い掛ける。





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