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The Bitch (ザ、ビッチ)
第7章 2024年3月17日日曜日
 57

 別にわたしは今更いいオンナの、大人の女のフリ、振る舞いをしたいつもりはない…
 いや、さっきまであれ程の痴態の姿を麻耶さんに晒した訳であるから、それは今更いうまでもない。

 あ…

 わたしは、ただ、和哉を麻耶さんあげるのが悔しかったんだ…

 いや、ホントはあげたくは、いいや、別れたくは…

 和哉と別れたくはないんだ…

「………………」

 急に込み上げてくるこの感情の波…
 まるでさっきまでのビッチでクソ女の感情とは真逆で正反対な昂ぶりの想いの感情、いや違う…

 これは愛情だ…

 ペットだ、ビッケだ、セフレだのと散々、自分の心を誤魔化してきていたけれど、違うのだ…

 これは愛なんだ…

 わたしは和哉を愛し、愛している、いや、愛していたんだ…

 そう、やっぱり彩ちゃんの言った通りだった。

「………………あ」

 こんな心の中で自問自答し、慟哭の想いを思い浮かべていたら…

「ゆ、ゆりさん……」

 わたしはいつの間にか…
 涙を溢れ、こぼしてしまっていた。

「あ、え…な、なんで…………」
 ツーっと、いや違う、次から次へと涙が溢れ、流れ落ちていく。

「ゆ、ゆりさん……」
 そしてそんなわたしの無意識な涙を見て、麻耶さんの心の哀しみ等々の騒めきが一瞬にして、まるでわたしの感情とリンクしたかの様に流れてしまったのであろう…
 今度は麻耶さんが一瞬にしてわたしに対して慈しみの視線を向けてきたのである。

「え、あ………」
 そしてわたしはそんな麻耶の視線の意味をそう感じ捉え…
 この無意識に溢れ流れ落ちていく涙と共にビッチでクソ女のプライドまでもが一緒に流れ落ちていく感じを自覚した。

 結局、このわたしのビッチでクソ女のプライドは…
 そんなビッチさを装っているだけのただの防御の為の、ディフェンシブな見栄と虚栄のカタチなのではないのか?

 所詮わたしは、和哉が欲しくて一人、単身でその敵であるわたしという存在に乗り込み、対峙してきたこの麻耶さんにはとても勝てないのではないのか?

 いや、ハナから勝ち目のない負け勝負であったのだ。
 
 最初からそれは分かっていたのかもしれない…
 ただ、足掻き、藻掻いていただけ。

 この麻耶さんの目を見てわたしはそう自覚した…のだ。



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