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第7章 2024年3月17日日曜日

　58

　わたしは和哉への愛を自覚し、自分の弱さを認識し…

　麻耶さんに対する完敗の思いに心、打ちひしがれ…

　ただこうして足掻き、藻掻いていただけだと…
　この麻耶さんの目を見てわたしは、一瞬にしてそう自覚した…のだ。

　わたしはビッチなオンナなんかじゃない…
　あ、いや、違う…
　この麻耶さんのオンナという強さに完敗をし、自分の中に隠していたオンナではない、女の弱さを露呈させてしまったのである。

　もう絶対にこの麻耶さんには勝てない…
　と、心の中でそう強く感じ、いや、理解してしまった。

　そして…

「も、もういいわ…
　アナタに和哉を上げる」
　無意識に、いや、わたしの中のオンナの、いいや、女の弱さがそうコトバに漏れたのだ。

「え、あ、え？」
　そんな突然のわたしのコトバに麻耶さんは戸惑いの声を漏らし、そしてわたしの目を覗き込んでくる…
　そう、その彼女の目はまるで可哀想なオンナではなく、女を見てくる慈しみの目。

「ほら、もういいのよ、和哉を麻耶さんにあげるからっ…
　もうわたしは和哉とは逢わないからっ」
　その麻耶さんの慈しみの、哀れみの目から逃れる為には…
　もうそう言うしかなかった。

「え、あ、あぁ？」
　このわたしの豹変には理解が追いつかないのであろう…
　だってあれ程の狂態、痴態を見せつけてきたわたしが手のひらを反したかの様なコトバを言ってきたのだから。

「もういいのよっ、もう和哉とは逢わないし、完全に別れるからっ…
　アナタ、麻耶さんにあげるからっ…
　だから、だからもう…」

　不思議と心の騒めきや、哀しみ、そして涙は止まっていた…

「だからもう帰ってっ…
　もう二度と来ないでっ...」
　わたしはそう叫んだ。

　もう終わり…

　もう和哉とは終わり…

　もう和哉とは逢わない…

　そして…

　わたしは、また…

　ビッチなクソオンナに戻るんだ。

　もうオトコなんていらない…

　あ、いや、違う…

　もう…

　男は愛さない…