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The Bitch (ザ、ビッチ)
第2章 2024年2月17日土曜日
 2

17日土曜日の練習時…
「練習終わったらミーティングがてら食事に行きませんか?」
 と、わたしの所属しているヘッドコーチがサブコーチのわたしと、アシスタントの二人のコーチに声を掛けてきた。

 そして練習終了後の午後5時過ぎに、いつもよく利用している洋風居酒屋に4人で向かう。

 ヘッドコーチはわたしの4歳歳上の地元の中学の体育教師…

 アシスタントコーチの一人はやはり地元の中学教師でまだ26歳…

 もう一人は地元の大学4年生で、このチームの唯一の男性であり、やはり中学教師を目指しているそうである…

 そしてこの洋風居酒屋の経営者は、このチームのOGの父親であった。

 そこでミーティングを兼ねて、軽く飲み、食事をし…
 午後8時過ぎに解散した。


 そしてわたしは少し飲み足りないのと、早く帰宅してもきっとビッケの事を考えてしまうだろうと…
 二軒目に、よく行くワインバーへと向かう。

 この時の自分自身は…
 まだ、ビッケに対するいつもの悪癖について悩んでいたのだ。

 ダメなのは分かっているのだが、一応、なんとかできないか?…
 と、足掻いていたのである。

「いらっしゃいませぇ」

「こんばんわ」

「あら、お一人ですか?」

「う、うん、一人…」
 ここ最近は何度かビッケと訪れていたので、そう訊かれてしまった。

 あ…
 そういえばこの店のカウンターで、初めて彼、ビッケに声を掛けられたのだった…
 ザワザワと、微妙に心が揺らいでしまう。


「とりあえずスパークリングワインをグラスで…
 あと、トマトのカプレーゼを…」
 最近のお気に入りの組み合わせである。

 ヤバいわ…

 この三ヶ月で飽きる…という現象は、過去に何度となくあるのだが…

 今回に限り、この衝動の引き金が、あの『能登半島地震』というきっかけのせいもあり…

 なんとなく、いつもの様な開き直りがなかなか出来ないでいたのであった。

 すると…

「あれっ、ゆ、悠里じゃね?」
 不意に後ろから声を掛けられたのだ。

「え?」

 後ろを振り向くと…

「あぁ、やっぱり悠里だぁ…
 オレだよオレ、栄二だよ、栄二…」

「あ…
 え、栄ちゃんなの?」

 そこには…

 高校時代の同級生である『笹原栄二』が、にこやかな笑顔で立っていた…



 

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