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The Bitch (ザ、ビッチ)
第4章 2024年2月19日月曜日…
 2

「お待たせ…」
 わたしは色々な意味でオックンを焦らす為に、ワザと約束より約20分遅れにバーに着いた。

「あ、ううん、全然だよ…
 そ、それよりも…」

 するとオックンはわたしがカウンターに座るや否やそう話し始めてくる…

「こ、この前は本当にゴメン…
 あまりにも気持ち良くて…

 あ、あまりにも…夢みたいでさ…

 そ、それに、ここ最近、ホント、仕事が忙しくてさ…
 つい…」
 と、それはそれは真剣な眼差しでわたしを見つめながら謝ってきたのだ。

 それはそうであろう、まだ未挿入のわたしにフェラされ、アッという間に射精をし、そしてそのまま寝落ちしてしまったのだから…
 その謝罪からは、彼、オックンの真剣さと誠実さが伝わってくる。


「うん、大丈夫よ、分かってるから…
 それに…
 そんなに怒ってないから…」

 それは本当であった…
 わたしはその寝落ちに対しては本当に怒ってはいない。
 
 ただ…

 これはわたし自身の、あの夜の想いからオックンに抱かれ、和哉との心の決別的な区切りのきっかけにしたかったという思いがあったから…

 ただ… 

 ただ…

 怒りではなく、失望してしまっただけであったのだ。

 そう、怒りでは無くて…

 失望、落胆であった。

「そ、そうか、そう、良かった、あ、本当にゴメン…」

「うん、大丈夫だから、そんなに謝らないでよ」

「あ、う、うん」
 オックンは本当に安堵の色を浮かべてくる。

「それよりも、注文させてくれる?」
 そう、わたしはまだ、お酒を注文さえしていなかったのだ。

「あ、ご、ゴメン…」

「うふ、また謝ってる…
 あ、ドライマティーニを…」
 と、わたしは笑いながらオーダーした。

「う、うん…」

「そ、それよりもさぁ…」

「え?…」

「何でわたしが今夜誘ったのか?」
 
「あ、え、う、うん?」

「うん、どう思って今夜来たの?」

「え、そ、それは…」

 このタイミングで…

「お待ちどうさまです」
 バーテンダーがドライマティーニを目の前に置いてきた。

 わたしはまずはそのカクテルグラスを手に持ち、彼にかざし…
 口に含む。

 そして…

「…………………」

 黙って見つめていく。





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