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The Bitch (ザ、ビッチ)
第6章 2024年3月14日木曜日
 3

「え、あ、うん、なんか急に生理になっちゃってさ…」
 わたしはそう呟いた。

「え、あ、そうなんすかぁ」
 すると和哉、ビッケがのんびりした感じでそう応えてきた。

「なんかね、予定より一週間も早いのよねぇ」

「そうか、一週間もかぁ…」
 そう彼は応えるのだが…
 その反応はわたしには意外に感じていたのである。

 なぜなら今夜は3月10日…
 そして今、生理になってしまった。

 生理は約一週間はある…
 だから終わりの予定は約一週間後の3月17日前後。

 つまりそれは…
 3月14日のホワイトデーに丸被りしてしまうという事になるのだ。

 それなのにビッケは普通に聞き流してきた…
 いや、今はただ単に、ヤリ疲れしていてそんな考え、計算が思い浮かばないのであろうか?、と、わたしはビッケの様子を見て、そう思うのだが…

 確か、先の2月14日のバレンタインデーは、いや、その前後は、先の『能登半島地震』がきっかけとなり、過去のトラウマが蘇ってしまい、ビッケ、ううん、和哉に対して盛り上がり、昂ぶってきていた愛情という想いが一瞬にして揺らぎ、不惑な思いに激しく動揺してしまい…
 そんな渦中でのバレンタインデーは、わたしは形式だけのまるで義理な軽い感じで済ませてしまっていたのである。

 だから敏感で聡明な和哉は…
 秘かに、いや、多分、恐らく和哉は薄々わたしのそんな心の揺らぎや異変に感づいてはいたと思われた。

 いや、絶対に感づいていたと思う…

 だがそんなわたしを和哉の聡明さと、わたしに対する大きな愛情により繋ぎ留めてくれ、そして現在に至る位にまで二人の関係は戻り、いや、更に昂ぶったのだ。

 それなのに…
 そんな和哉、ビッケはなぜかそのホワイトデー被りに対して全く触れてこないのであった。

 そしてその不問に対して、逆に、わたしが不惑な思いに揺れてしまったのである…

 いや、これも和哉の作戦なのか?





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