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The Bitch (ザ、ビッチ)
第6章 2024年3月14日木曜日
 5

「い、いや、こ、恋人同士じゃないから」
「ふーんそうなんすかぁ」
「そ、そうよっ」
「ふ、本当にツンデレなんすからねぇ」
 また云われてしまった。

 この言葉を云われてしまうとわたしはもう…
 ぐうの音も言えなくなってしまう。

「えっ、あっ、だ、だって、バ、バレンタインのチョコだって… 
 仕方ないから上げたたけだし…」
 それは確かにあの時期は『能登半島地震』のショックで心が揺れ、揺らいでいたから…
 それに本当に二人の間に壁を、距離を置こうとしてはいたから…
 それに上げない訳にもいかなかったから…
 義理チョコ感があったのは本当であったのだ。

「ふぅん、そうっすかぁ」
「そうよっ」
「ふぅんでもぉ抱かせてくれたじゃないっすかぁ」
「あ、い、いや、それは…」
 その和哉のややからかってくるような、意地悪気な感じの顔に少し苛つく。

「あ、あの夜は寒く、寒かったから、傷が疼いちゃって…だから…」
 確かにそもそものセフレの条件の一つには…
 わたしのその疼きの呼び出しには必ず駆け付ける事という約束事があった。

 だがいつの間にかそんな約束は…
 ただのわたしの言い訳みたいにはなっていたのだ。

「あぁそうっすかぁ…
 ホント悠里さんはツンデレさんなんすからぁ」
「あっ」
 和哉はそう呟きながらわたしの耳たぶを甘咬みしてきた。

 まだ、わたしは和哉に後ろから羽交い締めされたままであったのだ…

「ち、違うわよ、違うもん」
 必死な、無駄な抵抗の抗いであった。

「へぇふぅん、そうっすかぁ」

「うん、そう、そうよっ」

「ふぅんじゃあ、どうせ生理になっちゃったって事でホワイトデーは無しって事にしますかぁ?」

 えっ…

「っ……」
 言葉には出さなかった。

 だが冗談なのは分かっているのだが…
 心が一瞬、固まってしまった。

「じゃあホワイトデーは無しって…」
 本当に和哉に完全に遊ばれてるみたい…

 ビッケのくせに…

 ううん、わたしは…

 本来のわたしはヤリマン女のクソ女のビッチな筈なのに…

 これじゃ、これじゃぁ…

 男に、それも9歳も年下の男に惚れているただのデレ女じゃないか…

「ホワイトデーの夜は無しに…」

 そんな和哉のウソの言葉に…
 いや、ウソに決まっているのに、心を揺らがせているデレ女になっていた。




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