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飴玉ひとつぶん
第1章 退屈しのぎ
「ホント、ピュアだよねー。キヨは。ちょっと羨ましい……。手を繋ぐのも、キスをするのも、なんとも思わないんだよね。ほら、日常で偶然誰かとぶつかったりしても、特になんも思わないじゃん? そんな感じ。
 ちょっと肩がぶつかっただけ。それが、ただ唇なだけ」
「その辺、結構ドライなんだな。女嫌いになったりしないのか?」
「うん、しない。空っぽな関係でも、ぬくもりがあれば、少しは寂しさ紛れるし。まー、うざいと思うことはあるけど。ちょっとおかわり取ってくる」
「ん」
 レイは空になったグラスを持って、ドリンクバーへ行く。きっとまた、大量のガムシロとアイス珈琲を持ってくるのだろう。

「ん?」
 疑問がひとつ、浮上する。レイは甘党というより、辛党だ。正確には、甘味より、塩分があるものを選ぶ。
 彼とは家族ぐるみの付き合いがあって、子供の頃に何度も一緒にファミレスに行った。
 その時、親に「デザートなにか食べる?」と聞かれた時、キヨは滅多に食べられないパフェなどを頼んだりしたものだが、レイはサイドメニューのからあげやポテトを注文する。
 だから、てっきり甘いものは苦手だと思っていた。
 そんなレイが、何故ガムシロをたくさん入れたアイス珈琲なんかを飲むのだろう?

「ただいま」
 レイは片手にアイス珈琲。もう片手には持てるだけのガムシロを持って戻ってきた。
「なぁ」
「ん?」
「お前、甘いの好きじゃないよな? なんでそんなガムシロ入れまくった珈琲なんか飲むわけ?」
「あはは、今更?」
 ザラつくような乾いた笑い声をあげながら、ガムシロをどんどん投入していく。
 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……。
 ガムシロが増えるたびに、珈琲のかさが増していく。

 ストレスの蓄積。

 少なくともキヨには、そう見えた。
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